闇に溺れた天使にキスを。
「まずはごめんね。白野さんのこと守るって言ったくせに、守れなくて死ぬような思いさせて」
神田くんの手が私の喉元に触れ、“あの時のこと”が脳内再生される。
「……っ」
怖くなって咄嗟に神田くんの手を払ってしまい、心臓がドクドクとうるさくなっていた。
嫌な汗も流れ、神田くんを見ることができない。
「……ほら、やっぱり。
怖いよね」
首を何度も横に振る。
このままでは心配かけさせてしまう。
わかっているけれど、指先がだんだんと震えてしまう。
そんな私の手を握ったかと思うと、神田くんは私の首元に優しくキスを落とした。
まるで忘れさせてくれるような行為に、恐怖心は抱かなかった。
それをわかったのか、今度は舌を這わせてきて。
「……っ、だ、ダメ」
さすがの私もピクッと反応してしまい、神田くんを止めに入る。
けれど彼が止まることはなく、ゆっくりと上書きするかのように動いていく。
キス以上に恥ずかしくなった私はぎゅっと彼にしがみつくと、ようやくやめてくれた。
「怖くなるたびに俺が忘れさせてあげるから」
甘く誘うような表情に、今にも手を伸ばしてしまいそうで。
彼の行動ひとつで私は怖さを忘れてしまう。
魔法のような人。
「でも、今更だもん…」
少しばかりの反抗。
あの時神田くんは、私より宮橋先生を選んだから。
このままでは神田くんの虜になり、全部なかったことにしてしまいそうで。
思い切って踏み切ることにした。
きっと今しか聞けない。