闇に溺れた天使にキスを。



「私……?」
「敵は白野さんを狙ってる」


私が狙われている…?
それはどうして?

まったくわからなくて戸惑っている私を、神田くんはぎゅっと抱きしめた。


「……華さんが言ってた。白野さんに恐怖心を植え付けるようにしろって、敵が指示したらしい。

そんなの無理だと言えば、首を絞めて気絶させればいいと。死ぬ寸前までやれって。そこからは華さんも洗脳されたんだろう、逆らえない状況まで持ち込まれて…」


「じゃ、じゃあ今その敵は」


「相手は相当なやり手だから、なかなか行方が掴めないんだ。でも絶対に近くにいる。

だから俺はそれまで白野さんと距離を置こうと思った。そうすれば敵は喜び、牙を剥くだろうって」


初めて聞く真相。
私が考えていたよりもずっとずっと重いもので。



「でもやっぱりできなかった。
俺ってもう白野さんがそばにいないと壊れるらしい。

自分でも驚くくらい感情の制御ができなくなる」


「そんなの、神田くんだけじゃない…私もだもん」
「……涼雅と仲良くしてたくせに」

「む、それなら神田くんのほうが」
「あれは嘘だよ」


私は涼雅くんと何もしていないため、言い返したけれど。

嘘と言われて思わず黙ってしまう。


「ごめんね、嘘ついた。
白野さんに嫉妬してほしかったから」

「じゃ、ほんとは…」

「どうして誤解したかわからないけど、一切そういうことはしてないよ」


その言葉で心の底から安心感が湧いた。


「華さんもあの時は正気を失っていたし、勢いで何か言ったかもしれないけど安心して。

俺は白野さんしかいらないから他に目がいくなんてありえないし、何があってもそんなことはしない」


「……うん」


心に神田くんの言葉が響いて、私は彼を信じるんだと思った。

< 505 / 530 >

この作品をシェア

pagetop