闇に溺れた天使にキスを。
「私……?」
「敵は白野さんを狙ってる」
私が狙われている…?
それはどうして?
まったくわからなくて戸惑っている私を、神田くんはぎゅっと抱きしめた。
「……華さんが言ってた。白野さんに恐怖心を植え付けるようにしろって、敵が指示したらしい。
そんなの無理だと言えば、首を絞めて気絶させればいいと。死ぬ寸前までやれって。そこからは華さんも洗脳されたんだろう、逆らえない状況まで持ち込まれて…」
「じゃ、じゃあ今その敵は」
「相手は相当なやり手だから、なかなか行方が掴めないんだ。でも絶対に近くにいる。
だから俺はそれまで白野さんと距離を置こうと思った。そうすれば敵は喜び、牙を剥くだろうって」
初めて聞く真相。
私が考えていたよりもずっとずっと重いもので。
「でもやっぱりできなかった。
俺ってもう白野さんがそばにいないと壊れるらしい。
自分でも驚くくらい感情の制御ができなくなる」
「そんなの、神田くんだけじゃない…私もだもん」
「……涼雅と仲良くしてたくせに」
「む、それなら神田くんのほうが」
「あれは嘘だよ」
私は涼雅くんと何もしていないため、言い返したけれど。
嘘と言われて思わず黙ってしまう。
「ごめんね、嘘ついた。
白野さんに嫉妬してほしかったから」
「じゃ、ほんとは…」
「どうして誤解したかわからないけど、一切そういうことはしてないよ」
その言葉で心の底から安心感が湧いた。
「華さんもあの時は正気を失っていたし、勢いで何か言ったかもしれないけど安心して。
俺は白野さんしかいらないから他に目がいくなんてありえないし、何があってもそんなことはしない」
「……うん」
心に神田くんの言葉が響いて、私は彼を信じるんだと思った。