闇に溺れた天使にキスを。






疲れが嘘のように吹き飛んで、ポカポカと胸が温かい中で車へと乗り込んだ。


「……お前ら、どこかでイチャイチャしてたろ」


そんな私を見て、隣に座る涼雅くんは呆れ口調でそう言った。


「へへ…内緒」

さっきまでの甘い時間はふたりだけの秘密。


実は昼休みに倒れた時からしばらく眠っていた私は、目が覚めたときすでに6時間目に突入していたらしく。


結局帰りのホームルームまで保健室にいた私たち。

その間保健室の先生が一度も来なかったのは不思議に思ったけれど、神田くんとふたりで過ごせるからってあまり深くは考えなかった。


「やっと誤解とけたわけだ?」
「うん……ありがとう、涼雅くん」

「あんな泣いといて、今度はその笑顔かよ。
うぜぇ」

「わわっ」


何か不服に思ったことがあるらしく、頭をわしゃわしゃ撫でられてしまう。

その結果ボサボサになる髪。
涼雅くんはこのような嫌がらせが好きなようだ。


「もー…」
「とにかく油断するなよな」

「え?」
油断してたら敵に食われるぞ」


縁起の悪いことを言う。

行き帰りもずっと、こうして送ってくれているのに敵と遭遇することだなんてまずないと思った。


「大丈夫、ふたりがこうして守ってくれてるから。
ありがとう。

……あ、宮木さんもだ。ありがとうございます」

「お礼を言われる筋合いはございません」


いつもよりずっと気が軽く、明るい気持ちでいられるから本当に不思議だ。

だからこそお兄ちゃんのことに関しても、もっと私に何ができるのかと考えようと思った。

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