闇に溺れた天使にキスを。
もう一度リビングに戻れば、お兄ちゃんはジュースも用意してくれていた。
「わぁっ…美味しそう」
「未央はここのケーキが本当に好きなんだな」
「うん、大好き!」
私たち家族がよく買うスイーツのお店は、品揃えもいいし評判も高い。
実際私が今まで食べてきたスイーツの中で一番美味しいと思うお店だった。
何度食べても飽きなくて、リピートしてしまう。
「あー、食べてる未央の姿も本当にかわいいなぁ」
「かわいくないよ」
「かわいいよ本当に。動画撮っていい?」
「絶対ダメ」
食べる姿を動画に残すだなんて、どんな趣味をしているんだ。
特に妹に対して。
「ちょっとだけ」
「……ダメです!」
本当に撮ろうとしてくるから、慌ててチョコケーキを食べ進める。
「あっ、ずるいぞ」
「お兄ちゃんが変なこと言うから。ゆっくり食べたかったのに……」
味わうことができず、もったいない食べ方をしてしまった。
けれどチョコの風味がまだ残っているため、満足感はありお兄ちゃんに『ごちそうさまでした』とちゃんと言った。
「未央に喜んでもらってよかった」
「本当に美味しかったの」
ジュースも飲み終わる頃にちょうどお兄ちゃんもチーズケーキを食べ終え、そのタイミングを見計らって私はふたり分の食器を片付ける。
その後リビングに戻ればお兄ちゃんはソファに座っていて、迷わず私も隣に腰をおろした。
「え、もしかして今からハグの時間…」
「やっぱり部屋行く」
「嘘だって、お願いだから俺のそばにいて」
お兄ちゃんが変なことを言いだすから、私は立ち上がったけれど。
腕を掴まれてまた座らされてしまった。