闇に溺れた天使にキスを。



まるで子供の遊びかのように、楽しく笑っている神田くん。

どうしてそんなのにも冷静でいられるの?



「じわじわと俺を苦しめたいだろうからね」
「……何イキッたこと言ってんだ」

「今になって怖くなった?」


少しお兄ちゃんの拳銃を持つ手が震えていて。
今の神田くんを恐れているのがわかる。



けれど刺激すればするほど、神田くんの命が危なくなるのに───


「目の前に龍崎の殺したい人間がいるんだよ?
それも今の俺は無力だ。

早くその引き金を引けばいいよ」



どうして、どうして神田くんはそんなこと言うの。
わけがわからなくて、不自然にも思えて。


もしかしたら何か意図があるんじゃないかと思ってしまうほど。



「お前、調子乗るんじゃねぇよ!」
「……っ、やめて!」

まるで自我を失ったかのように、またお兄ちゃんは引き金を引いて。


乾いた音が響いたと思うと、今度は神田くんの右肩に命中した。


「いやぁっ!神田くん!」


涙のせいでうまく見えないけれど、神田くんの肩から血が飛び散った様子がわかる。



「お兄ちゃん、お願いやめて……なんでもするから、私なんでもお兄ちゃんの思い通りになるから……好きなようにしていいから、神田くんだけはっ…」


私にできることはひとつしかなくて。
もう助けてもらわなくていい。

このままお兄ちゃんの思い通りになるから、どうか神田くんだけは助けて欲しいと。


「……未央、かわいそうな未央。
そうだね、確かにやり過ぎたね。

じゃあ未央からあいつに言えばいいよ、お前なんか最初から好きじゃなかったって」


それで満足するなら、神田くんが助かるなら。
彼にも嫌われていいと思った。

それほどに神田くんの命は危なくて───


「……神田くっ、私」
「次は?」


けれど彼は私の言葉を遮るようにして、次を求め始め。

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