闇に溺れた天使にキスを。
どうして神田くんがこんな辛い思いをしているのに、私は何もできないの?
命懸けで守ってくれたのに、私は彼に何ひとつ返せていない。
また夏祭りのように繰り返すの?
このまま何度も繰り返すの?
そんなの嫌だ。
お願いだから神田くん、どうか自分を優先して───
神田くんの命令が絶対なのなら、彼自身に言わせればいい。
“自分を優先してほしい”という趣旨の言葉を彼に言わせればいいのだ。
そう決心した私は神田くんの手をぎゅっと握る。
「……白野、さん…?」
もう気力がないのか目はうっすらと開けた状態のまま、掠れた声で話すのがやっとの様子で。
「どうして助けに来てくれたの?」
「え…」
「私なんかほっておけばいいのに。
どうして助けに来たの」
「俺が唯一、これからもずっと…そばにいたいと思った人だから……」
喋るのがやっとのはずなのに、無理して話してくれる彼。
「それなら先に神田くんの治療しないと、私たち一緒にいられないかもしれないんだよ?」
「……別に、いい」
「どうして…!」
「白野さんに、命の危険が及ぶくらいなら……俺は死を選ぶ」
「バカなこと言わないでよ!」
バカ、本当にバカな人。
ここまでバカな人だとは思わなかった。
「神田くん以上に私は…神田くんのことが好きなのにっ……死んじゃったら意味ないよ、一緒にいられないんだよ……嫌だよ、自分の命を安売りしないで」
「……白野さ」
「そうやってずっと周り優先して自分のことは後回しにするの?そんなのダサいだけだよ、それで死んだら笑い者だよ……!こんな時くらい自分優先してよ、自分勝手になってよ…」
いつまで自分の価値を認めようとしないの。
してくれないの。