闇に溺れた天使にキスを。
「今も痛い、よね…」
あまり深く聞くわけにもいかないし、かといってある程度話さなければならない。
そのギリギリの境界線を探しながら、私は慎重に言葉を選んでいるつもりだ。
「ううん、今はもう大丈夫」
「それは嘘だ。だって朝もまだ痛かったはずだもん」
忘れない、穏やかで優しい表情以外の姿を。
「やっぱりバレてた?」
「バレてたっていうか、ずっと気になってて…それで、保健室に行くところを見たから…」
これ以上は言えない。
深入りすることになる。
そう思ってわざと言葉を止めたのに、神田くんが───
「それで、見られちゃったんだね」
穏やかな口調で、その部分に触れてきた。
「白野さん」
反応に困る私の名前を彼が呼ぶ。
ふと顔を上げれば、優しく笑う彼の姿。
けれど、何故だろう。
嫌な予感がするのは。