闇に溺れた天使にキスを。



「どうしてここに連れてきたか、わかる?」
「……口止め、するため」

それしかない。
私は見てはいけないものを見てしまったから。


「大丈夫、言わないよ。
きっと誰も信じてくれないだろうから」

首を何度か横に振り、安心してもらえるよう彼の目をじっと見つめる。


「口止めもあるけど、それだけじゃないよ」
「……へ」

その時。
視界がぐらりと揺れ、反転した。


背中には柔らかなクッションのようなものが当たっており、視界に映るのは神田くんの姿。

つまり私は───


彼に、押し倒されている。


「ベッドの上は危険だって、思わなかった?」
「……っ」

バカだ、私。
どうして警戒心を強く持たなかったのだろう。

その結果がこれ。
神田くんに押し倒され、逃げ場を失った。

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