闇に溺れた天使にキスを。



私に覆い被さる彼が笑う。
余裕な笑み。

対して私は焦りが増し、彼の胸元を押し返そうとしたけれど───


「怪我してる部分痛むから、大人しくしてね」

そう言われてしまえば抵抗なんかできなくて、今度は手のやり場に困ってしまう。


本当にずるい言い方。
さっきまでは大丈夫だと言っていたのに。

抵抗するなと言っているのも同然だ。


けれど本当に抵抗して、神田くんの怪我の痛みを悪化させてはいけないから、大人しく彼を見つめる。


「今は俺のこと、怖くない?」


すると今度は疑問を投げかけられた。
神田くんのことが、怖くないかどうか。


あの傷に刺青を見た時、正直怖くて震えてしまった。

けれど今は震えがないし、怖いとも思わないから私自身も不思議だった。

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