闇に溺れた天使にキスを。
多分、神田くんがいつも通りだったから。
ふたりきりになった今も、私の知っている彼の姿があったから。
夢なんじゃないかって思う自分がいた。
こんな状況ですら危機感を持てない自分は、逆にダメだと思うのだけれど。
「怖く、ないよ」
じっと神田くんを見つめ返す。
「……そっか」
神田くんが笑った。
どこか嬉しそうな笑み。
頬が緩んでいるように見えなくもなく、少しだけかわいいと思い、きゅんとしてしまった。
「やっぱりメガネ、邪魔だな」
「へ……」
「もっと白野さんをはっきり見たい」
「……っ」
また、ストレートな言葉を投げかけられる。
昨日同様、私は恥ずかしくなって顔が熱くなってゆく。
彼はメガネを外し、まっすぐな瞳が私を捉えた。