闇に溺れた天使にキスを。



「あ、やっと照れた」

まるで、私が照れるのを待っていたかのような言葉。
また嬉しそうに笑う。


「…意地悪」

照れた顔を見て嬉しそうに笑うだなんて、意地悪な人。


「ごめんね。そんなに拗ねないで」
「す、拗ねてないもん…」

「なんだろう。
白野さんを見てると、欲しくなる」


私を見てると、欲しくなる?

何が欲しくなるのか。
大事な部分が言われないため、わからない。


理解できずにいたら、突然神田くんが自分のネクタイを緩めだした。

どきりとする。
その行動を見て、昼休みのことが思い出された。


赤がメインである、鳳凰の刺青を。


「神田くん、何してるの…?」

不安になり、彼に話しかける。

起き上がりたいけれど、彼が覆いかぶさっているためそれができない。


「夢で終わらされるのは、嫌だなって思って」


緩められたネクタイ。
さらにシャツのボタンをふたつ、器用に開ける。

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