闇に溺れた天使にキスを。
拓哉さん、とは多分神田くんの下の名前。
けれど“先輩”呼びでも“くん”呼びでもないことに違和感があった。
「……華さん」
そして、ようやく彼が動いた。
私から離れるようにして起き上がり、ドアに目を向ける。
“華さん”。
それは昨日、私のことを勘違いした人の名前。
華さんとは一体誰のことか。
わからなくて、ゆっくりとドアに視線を向ければ───
「……え」
そこには、保健室の先生の姿があった。
噂通り色気がダダ漏れである女の先生で。
じゃあこの先生が、神田くんの言っている“華さん”って人なの?
「拓哉さん、その子は…」
「ああ、この子は同じクラスの白野さんです」
不思議な光景。
先生と神田くん、どちらも敬語を使っているから。