闇に溺れた天使にキスを。



「それなら、今すぐその子を───」

「華さん、落ち着いてください。
白野さんは何も悪くない、巻き込まれた側です」


何の話をしているのか。

まったくわからなくて、ただ大人しく神田くんに抱きしめられている私。


「ですが拓哉さん、広まってしまえば狙われてしまうかもしれません」

「だから白野さんを脅せ、と?」


どこか冷たく感じる彼の声。
思わず肩がビクッと跳ねてしまった。


「……っ、すいません」

おかしい、ふたりの関係性が。

やっぱり会話を聞く限り、神田くんのほうが立場が上のようだ。


けれど、それ以上に───


彼の言葉が引っかかってしまう。
脅す……私は、脅される立場にあるの?


「白野さんは何も気にしなくていいからね」

不安になる私に気づいたのか、先ほどの冷たい声とは違い、優しく穏やかな声で話しかけられる。

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