闇に溺れた天使にキスを。



「ダーメ、俺から離れない」
「せ、先生からの伝言を聞くの…」


そのために、大人しく彼についてきたのだ。


「真面目さんだ」
「神田くんのほうが真面目だもん」

それなのに、今の彼は意地悪で。
なかなか私の願いを受け入れてくれない。


「じゃあ…ふたりで道、踏み外す?」
「えっ…」

私と少し距離をとり、じっと見下ろす彼の瞳は揺らがず、真剣で。

危険な誘い。


返答に戸惑っていると、彼は優しく微笑んだ。


「なんて、嘘だよ。
白野さんを危険な目に遭わせたくない」

「えっと…」


どう返すのが正しいのか。

わからなくて言葉に詰まっていると、彼が話を変えるようにして口を開く。


「先生の伝言っていうのは、図書室の先生からだよ。
白野さんに貸し出し中の本、期間過ぎてるらしいからなるべく早く返して欲しいって」

「……あっ」


すっかり忘れていた。

読み終わって返さないといけない本があるのに、ここ最近図書室にすら行っていない日々が続いている。

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