闇に溺れた天使にキスを。


「あれ、神田くん…鍵閉めないの?」
「鍵?…ああ、お昼はここで食べようと思って」

「教室で食べないの?」

「静かな場所が好きだから。
たまにはここで食べようって、今思いついた」


つまり神田くんは、またこの空き教室に戻ってくるらしい。


「じゃ、じゃあ…あの、神田くんは先に戻ってください」
「え?一緒に戻らないの?」

「あの、また噂が広まっちゃうから…」


何か言われるかなと思ったけれど、神田くんはすんなり受け入れてくれた。


「そっか、わかった。
じゃあ先に戻るね」

「うん…!」


神田くんの言葉に対し、安心して頷く私。

それから少し経ったところで、私も遠回りしながら教室に戻ると、もう神田くんの姿はなかった。

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