闇に溺れた天使にキスを。
「嫌な女って、思わなかった…?」
「嫌な女って白野さんのこと?」
彼の言葉に頷く私。
だって、あれだけで避けていたのだ。
「そんなこと、絶対思わないよ。
だって俺、白野さんが来るの待ってたから」
「……っ」
やっぱり。
やっぱり彼はわかっていたんだ。
だからお弁当を食べずにここで待っていた。
「不思議だな。
白野さんといると、空気が温かくなる」
「空気、が…?」
彼なりの表現なのだろうけれど、うまく理解できない。
「そう。だから白野さんとふたりは心地いい」
見る限り、冗談で言っているようには見えない。
目を細めて穏やかな表情の彼。
「でも、私なんて全然…他の子とは違うくて」
気弱で、本が好きという自分の気持ちを押し殺して、周りに合わせている人間。