アナログ恋愛
「梢遅い!さぼってたろ!!」
会議室に足を踏み入れた瞬間聞こえてきた声に、カチンときた。
(そもそも、いつから呼び捨てになったのか。)
「…すいません。」
なんとか 態度には出さないように…と思ったけど、声のトーンには不機嫌さが滲み出た。
…だって、元はと言えば、先輩のせいじゃん。
あたしだって、早く終わらせたかったよ。
「…『桔平最近連絡くれないから寂しい。』『いつでも何でも手伝うから呼んでね。』『明日は泊まりに来るよね?』」
「は?」
抑揚をつけず、淡々と言葉を発するあたしに、先輩は目を丸くした。
ポカンとした表情のくせに、それでも見栄えのいい顔に腹がたつ。
…もっと間抜け顔だったらいいのに。
…そしたら、少しは気が晴れたのに。
こんな時までカッコイイなんてずるい。
「…エミさんとユカさんとリエさんからの伝言です。」
「あぁー…うん。」
一瞬少し気まずそうな顔をして、困ったように笑う先輩。
ありがとね、と言われ、自分の態度を少し反省した。
もう少し柔らかい言い方にすれば良かったな。
…悪い人じゃないって わかってたのに、なんであんな言い方しちゃったんだろう。