アナログ恋愛



確か、生徒会室は隣の校舎にある…はず。
今まで生徒会室に用事なんてなかったから、あまり自信はないけれど。

もし違ってたら誰かに聞こう、と思いながら渡り廊下を歩く。
渡された書類をパラパラとめくれば、それが 文化祭当日に配る冊子の原稿だとわかった。


校内の地図と各クラスのPRが掲載されたその冊子は、全校生徒だけでなく、外部からのお客にも配られる。
それを見て校内を回る者が多いので、どのクラスも気合が入っていた。

白黒で印刷されるため、カラフルにすることはできない。
しかし、イラストや装飾がちりばめられたそれは、どれも華やかに思えた。


「お化け屋敷、たこ焼き屋、そばめし…メイド喫茶まであるや。」


冊子として配られる前に読めて、なんだか得した気分だ。
いつの間にか夢中になっていたあたしは、前から歩いてくる人物に気づいていなかった。


「―おい、及川。」


聞き慣れた、低い声。
手元から視線をあげると、眉を顰める小野チャンの姿があった。



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