アナログ恋愛
「ふーん…そうなの。」
小野チャンのこと。
付箋の人のこと。
遅刻と赤点が原因でプリントをやらされているということだけは伏せて、最近あったことを全て話した。
―松谷先輩のことは少し迷ったけど、手伝いをしているのだということだけ。
「…うーん…じゃあ『好きな人』っていうのは、その小野先生のことなのね?」
「好き…っていうか…」
気になる、ぐらいなんだけど。
「そうねぇー…私にはよくわからないけど…
慎二…つまりあなたのお父さんへの感情と一緒になっているということはない?」
「おとう、さん…?」
お父さんは、あたしが7つの時に亡くなった。
あまりにも突然の事故で、お母さんも、おばあちゃんも毎日泣いてた。
…あたしだけは、何が起きたのかわからなくて、泣けなかったけれど。
そんなお父さんは、亡くなった当時まだ29歳。
背が高くて、手が大きくて、いつも頭を撫でてくれた。
…大好きだった。
もっと、一緒にいたかった。
いっぱい頭を撫でてもらいたかった。
「――違う、よ。そんなんじゃない。」
なんとか口に出したのは否定の言葉だったけれど、
「そう?梢がそう言うならいいんだけど。」
にっこり優しく笑ったおばあちゃんには、きっと
あたしの気持ちなんて見抜かれていたと思う。