アナログ恋愛
なにか、きこえる。
「…―え。…ずえ。」
だれ?
「梢!」
誰かに呼ばれたような気がして、目を開ける。
ゆっくり瞬きをすると、少しぼやけた視界に、咲が映った。
「さき…?」
「やっと起きた?」
「んー…なに、授業終わったの?」
「うん、今もうお昼休みだよ。
…ってかさ、お客さん。」
へ?
咲が指差すほうに目をやると、にこにこしながら手を振る松谷先輩と、
その先輩を取り囲むたくさんの女の子たち。
うわー…うちのクラスだけじゃなく、隣の隣のクラスの子まで集まっちゃって…。
…じゃなくて。
「!!!? 先輩っ!?」
「おはよー梢。よく寝てたね。」
ちょっ…!
周りの子の視線が痛い!!!
「先輩っ!ちょっと向こう行きましょう!!!」
先輩の返事を聞くことなく、あたしは先輩の腕を掴んで走った。
後ろから聞こえる、女の子たちの声は非難めいたもので。
あぁぁ…絶対質問攻めだ。下手したら呼び出されちゃう!!
呑気に「どこ行くの?」なんて尋ねる先輩が、憎かった。