アナログ恋愛
「んで…?何て答えたの?」
「正直に言ったよ。先生に頼まれて ちょっと手伝ってるだけだ、って。」
本当は、『頼まれた』のとは違うけど。
細かいことは気にしない。
とにかく、女の子たちには ひたすら「ずるい!!」と責められた。
まぁ、これも仕方ないよね。
あたしは今日初めて知ったんだけど、松谷先輩がわざわざ出向いてくるなんて ものすごく貴重らしい。
『来る者拒まず、去る者追わず』の典型例とも言える先輩が、特別美人でもなく、可愛くもない ただの後輩を訪ねてきたんだから、先輩ファンの女の子に与える衝撃は大きかった。
「まぁ、よかったじゃん。大半の子には、一応わかってもらえたんでしょ?」
「たぶん…。」
というか、そうであってほしい。
「…じゃあ、あたしはそろそろ帰るよ。」
会話が一段落したころ、咲が静かに席を立つ。
「あ!ごめんね。今日はほんとありがとう!!」
「いいよ いいよ。あたしはいつでも梢の味方だから。
プリント、がんばってね。」
にこにこと手を振る咲に、あたしも手を振る。
すぐに咲は見えなくなって、教室には1人きりになった。
2週間目に入ったこともあって、少し慣れた、この雰囲気。
「…さて、プリントをやろう。」
深く息を吸った後、あたしはシャーペンを握った。