アナログ恋愛
「こないだ取ったんだけど、俺いらないから。おまえにやるよ。」
「…小野チャンもゲーセンとか行くんだ。」
ほんとはすごく嬉しかったのに、可愛くないことばかり言ってしまう自分が嫌になる。
「俺だって、まだ若いんだよ。…つーか、いらないなら返せ。」
「や、いるってば!プーさんすきだもん!!」
取り返そうと伸ばされた手から、慌ててプーさんを守る。
ぎゅっと抱きしめて、小野チャンの手から遠ざけるようにすると、彼は笑った。
いつもの意地悪な笑顔じゃなくて、もっと無邪気な笑顔。
なぜか、どきっとした。
「…なら、いい。」
プーさんに伸ばされていた手は あたしの頭の上へ置かれ、くしゃりと撫でた後、すぐに離れた。
「――じゃあ、また明日な。」
「…あ、うん。」
手、離してほしくなかった。
もっと触ってよ、って思った。
湧き上がる感情に驚いて呆けていると、いつのまにか車に乗り込もうとしている小野チャンが見えて。
「―――小野チャン!!」
「ん?」
「あ、りがとう。」
送ってくれてありがとう。
プーさんをありがとう。
その両方の意味を込めたつもり。
「おう。」とだけ言って去って行った小野チャンには、きっと伝わった、よね?