アナログ恋愛



「え?」

「…及川さん、ちょっと来てほしいんだけど。」


3時55分。

リハが行われる体育館へ向かおうとしたあたしの目の前に現れたのは、
髪をくるくる巻いて、つけまつげがバサバサ揺れて、唇がグロスでキラキラ光る、美人さん。


「えっと…今じゃなきゃダメですか?」


時計をちらりと見て尋ねると、「すぐ終わるから」と腕を掴まれた。
振りほどけないほどの力じゃない…と思う。
けれど 彼女の真剣な表情は有無を言わせない力を持っていて。

仕方なく、頷く。


「…桔平と、つきあってんの?」


一瞬の沈黙の後、予想外の言葉が聞こえた瞬間。
どこかで見覚えのある彼女が、以前会った『リエ』だと思い当たった。


「はい!?」


あたしが、松谷先輩と?
―――そんなわけ、ない。


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