アナログ恋愛
「つきあってませんよ。」
…というか、実はあたし、リエさんが松谷先輩の彼女だと思ってた。
以前彼女は、
『明日は泊まりに来るよね?』
と言っていたから。
あのとき、他の先輩たち(エミさん、ユカさん、ミキさん、カナさん…あとは忘れた)もいろんなこと言ってたけど、
『泊まりに来て』なんて誰も言わなかったから。
「…ほんと?」
「本当です。」
予想が外れたことに少なからず動揺したけれど、やましいことは何もない。
焦れば疑わしく見えるから、と冷静に答えた。
けれど、彼女は納得しなかったらしい。
「…じゃあ なんで…」
「はい、そこまでー。」
リエさんの言葉を遮るように聞こえたのは、聞き慣れたあの人の声。
「…桔平。」
あたしたち2人しかいなかったはずの教室の入り口。
そこにもたれかかるようにして、松谷先輩が立っていた―。