アナログ恋愛


「梢遅いから、また寝てんのかと思ってさ。」


「…そしたら、こんなことになってた。」


そう言う松谷先輩の声は、どこか冷たくて。
ふと見ると、リエさんの大きな目には、涙。


「…桔平…あたし…、」


その声は震えていて、涙が溢れないように堪えているのがわかった。
けれど、その姿を見ても、先輩は顔色を変えることはなくて。


「なに、」

「…っ」


先輩がリエさんに向ける目は、あまりにも冷たい。
好きな人に そんな目で見られたら、どれだけ辛いだろう。

いつもあたしに見せるのとは あまりにもかけ離れた表情の先輩。
先輩を好きで好きで仕方ないんだろうと、痛いほどに伝わってくる、リエさん。


…あたしには、何もできない。


リエさんが先輩の彼女じゃないのはわかったけど、あたしよりも深い仲だというのは確か。
出会って たった2週間のあたしには、踏み込めない関係。





「…何も言えないなら、言わせてもらうけど、
おまえ、うざいよ。」


その瞬間、リエさんの目から涙が溢れたのがわかった。


…むり。




気がついた時にはもう遅くて。

あたしたち3人しかいない教室に、乾いた音が響いた。



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