アナログ恋愛
ごめん
うるさく鳴り響く目覚ましを止める。
まだぼんやりとした頭で、昨日のことを思い浮かべた。
あの後―つまり、小野チャンが帰ってから、あたしはすぐに寝てしまった。
――考えることから逃げるように。
小野チャンの穏やかな笑顔で頭をいっぱいにして、
リエさんの涙から、
先輩の、悲しそうな顔から逃げるように。
けれど、一夜明けた今、まだ完全に覚醒しきらない頭でも、
逃れることはできないのだと理解していた。
だって、ほら今も。
先輩の顔が頭に浮かんで、こんなにも苦しい。
昨日が金曜日だというのも、悪かった。
もし、今日学校があれば、謝ることができたのに。
「もし」なんて仮定の話をしても何も解決するわけがないのはわかっていたけど、
それにすら縋りたいほど、あたしは限界に近付いていた。
謝りたい。
会って、ちゃんと謝って、
また、笑った顔が見たい。
「梢―?」
なかなか起きてこないあたしを変に思ったのか、ドアの向こうからお母さんの声がする。
起きてるよ、とだけ返事をすると、「あら、そうなの」と声が返ってきた。
「今日もおばあちゃん家行くのよね?」
「…うん。」
最近は毎週欠かさず顔を出していたし、行かなかったら心配するだろう。
顔を見たら、泣いてしまうかもしれない。
…でも、大丈夫。
おばあちゃんに心配かけないためなら、がんばれる。