アナログ恋愛
手早く支度を整えて、玄関に立つ。
靴を履こうと座り込むと、珍しくお母さんが出てきた。
いつもは、見送りに出てくることなど あまりない。
きっと、昨日からあたしの様子がおかしいことに薄々気付いているのだろう。
「梢、無理しなくていいのよ?」
「無理なんてしてないよ、大丈夫。」
「そう?ならいいけど。…いってらっしゃい。」
無理なんて、してない。
ちょっと苦しいだけだから。
このぐらい、すぐ治せるから。
そのまま振り返ることなく、いってきます、とだけ言って家を出た――。