アナログ恋愛





「いらっしゃい、梢。元気だった?」

「…うん、元気だよ。」


いつも通りの笑顔で迎えてくれたおばあちゃん。
ほぼ毎週会っているのに、いつでも「元気だった?」って聞くんだ。


『たとえ1週間でも、風邪をひいたかもしれないし、何かイヤなことがあったかもしれないでしょう?』


前に聞いた時、そう言ってた。
つまり、この言葉は あたしのことを考えてくれている証拠。

―でも今日は辛い。
心配をかけたくないから、とは言っても、できれば嘘をつきたくはなかった。

それに、
「よかったわ」と笑うおばあちゃんが、本当は全部知っているんじゃないかと思えて。
「元気だよ」と言って笑ってみせても、見抜かれているような気がして。




「まぁ、早くあがんなさい。今日はおいしいお菓子があるのよ。」

「うん。」



あたしの気持ちを読み取ったかのように、おばあちゃんは よりいっそう柔らかく微笑んだ――。

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