アナログ恋愛
「…そういえば、今日はおばあちゃんに小野チャンのこと聞かれなかったな。」
電話を切ってすぐ、心を落ち着けようと入ったお風呂の中で1人呟く。
今日は、先輩のことで頭がいっぱいだとわかっていたから、聞かなかったのかもしれない。
『好きな人はできた?』
いつも聞かれていた質問。
先週は、小野チャンのことを話したんだっけ。
確か、付箋の人のことも話したけれど。
――今だったら、誰の名前を言うんだろう。
―小野チャン?
意地悪なのに、優しい人。
大きな、あったかい、優しい手をした人。
いつもあたしを助けてくれる人。
―松谷先輩?
誰からも好かれる人。
いつもにこにこ笑ってる人。
…ほんとはきっと、寂しい人。
―付箋の人?
どこの誰なのかもわからない人。
あたしを、見守ってくれている人。