アナログ恋愛
先輩


「…え!……ずえ!」


――誰かの声がする。


「梢!」

「!」


パッと目を覚ますと、少し焦ったようなお母さんの顔が目に入った。
…どうやら、昨日はあのまま眠ってしまったらしい。


「なにー…?」

「今日 急に仕事出なきゃいけなくなったのよ!」


あたしにとって、土曜日はおばあちゃんと、日曜日はお母さんと過ごす日だ。
けれど、忙しいお母さんは、こんなふうに急な仕事が入ることも珍しくない。
それを寂しがるほど子どもではなかったけど、無理して体壊さないか、正直 心配になる。


「…それで、ちょっとお願いがあるんだけど…」

「お願い?」














その数時間後、あたしはお母さんの『お願い』を叶えるため、ある場所に立っていた。


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