アナログ恋愛
「…そのまま、聞いて。」
先輩の声が、少しだけ震えていた。
背中から感じる鼓動も、早い。
香水のにおいに混じって、微かに感じた汗のにおいはきっと、
あたしを見つけた先輩が、慌てて走ってきた証拠。
「………梢、ごめん。」
「…ちが、」
「違わない。悪いのは、俺。」
謝らなきゃいけないのは、あたしなのに。
「ほんと、ごめん。…もう、俺の手伝いなんかしたくないよな。
…でも、それでもいいから…、嫌わないで。」
今にも消え去りそうなぐらいの、小さな声。
『嫌わないで』
先輩には似合わない、縋るような その言葉に、胸が痛んだ。
――あたしが、先輩を傷つけたんだ。
「…嫌わないよ。手伝いも、やめない。」
たとえ先輩が嫌がっても、
「あたしは、先輩から離れたりしない。」
…だから、そんなに悲しい顔しないで。