アナログ恋愛



「すいませーーん…」


付箋の人が誰なのかを考える暇もなく、あたしは第二会議室を訪れていた。


文化祭までの期間、実行委員長の部屋として使われているらしいそこは、普段ほとんど使われていないだけあって、とても綺麗で。

唯一、数枚の書類が散らばっている机だけが、人の気配を感じさせた。


「…どっか行っちゃったのかな?」


部屋の中には委員長らしき姿はない。
かと言って、勝手に入ることも躊躇われる。


そのとき、


「いらっしゃい、及川梢チャン。」



かすかに香ったのは、忘れもしない、あの香水だった。





< 9 / 78 >

この作品をシェア

pagetop