アナログ恋愛
「すいませーーん…」
付箋の人が誰なのかを考える暇もなく、あたしは第二会議室を訪れていた。
文化祭までの期間、実行委員長の部屋として使われているらしいそこは、普段ほとんど使われていないだけあって、とても綺麗で。
唯一、数枚の書類が散らばっている机だけが、人の気配を感じさせた。
「…どっか行っちゃったのかな?」
部屋の中には委員長らしき姿はない。
かと言って、勝手に入ることも躊躇われる。
そのとき、
「いらっしゃい、及川梢チャン。」
かすかに香ったのは、忘れもしない、あの香水だった。