オープン・ステージ
4-2
「色々と、覚悟しててね?」

「っ……!?」


 一瞬にして身体中の熱が、一気に顔へと集まっていった。


「ふふっ、なんてね。驚いた?」

「も、もう~!」


 気が動転してしまって、上手く言葉が出てこない。
 もう、ほんと、心臓に悪いよ……。


「でも今夜、本当に夜桜を見に行かない? 夜なら二人きりにはなれなくても、きっと素敵な時間を過ごせるよ。幻想的な風景を、君と一緒に、この目で見てみたいな」


 今度はいつもの穏やかな笑顔になって私を見た。


「そうだね、行ってみようか。私も夜桜はそんなに見たことないかも」

「じゃあ、決まりだね」

「うん。なんだか急に楽しみになってきた」

「それは良かった。僕もとても楽しみだよ」


 そして二人、笑い合う。
 これからもずっと、こうして二人で居られたらいい。

 そんなことを、私は心から思った。





 佳くんとの出逢いは運命的だった。

 彼に出逢って、何となく生きていた私は、深い眠りから目覚めるように息を吹き返した。
 もう終わっていると思っていた私の人生は、まだまだこれからだったと気付かされた。

 佳くんには、本当に感謝している。
 彼に出逢えて、本当によかった。

 人生は自分次第でどうにでも変えられる。
 良い方にも。悪い方にも。

 これから先、困難に打ちひしがれる時もあるだろう。
 それでも、自分で決めた事だから頑張っていける。我慢できる。

 そして、自分を信じてくれている人たちに応えたい。

 気が遠くなるほど長いようで、でもきっと、あっという間の人生だ。
 人生は一度きりで、やり直しが利かないもの。

 それなら私は、結果はどうあれ、自分の思うがままに人生を歩いていく。

 同じ音の名前を持つ、大切な彼と共に。


 了
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