オープン・ステージ
1-8
ピロン。
LINEの着信音が鳴った。佳くんからの着信だった。
【起きてる?】
【起きてるよ】
【三人のグループを作ったんだ。今から招待するね】
【分かった】
間もなくして、グループへの招待通知が来る。『サンダー(仮)』と表示されたグループ名に思わず笑ってしまった。
【入りました!】
【いらっしゃい】
佳くんからの笑顔スタンプに、私もスタンプで返した。
〝野田俊太が参加しました〟
俊太も通知に気付いたようだ。
【グループ名のサンダーに笑っちゃった】
【俊太、いらっしゃい】
【おい、誰だよ、グループ名考えたやつ】
【佳くん】
【僕だよ。ごめん、特に深く考えないで付けちゃったんだ。でも(仮)だし、あとで三人で考えようよ】
【そうか……】
そんな取り留めのない話をしているうちに、会話が自然と途切れたので、私はおやすみスタンプを送信して締めた。
そのままスマートフォンをベッドの枕元に置いて充電する。
そして、今日のプレハブ小屋での出来事を思い返した。
高校で進路を決めたときから、ずっと無気力に過ごしていた。このまま親の望むままに大学を卒業し、親の望むままに就職をして、自分の望まない毎日を、死ぬまでずっと繰り返していくのかと絶望すら感じていた。
でも今日、佳くんと出会って、初めて芝居というものをしてみて、やっぱり楽しいものだったのだと痛感した。
あんなにも楽しいと胸が熱くなったのは、一体いつ振りだっただろう。
どうしてもっと早く知ることが出来なかったのだろうか。どうしてもっと早く、彼に出会う事が出来なかったのだろう。
私の中で、今まで無理やり押さえ付けられていたものが再び力を盛り返し、私を押し返そうとしていた。