恋愛
オレは“男”として育てられた。

だけど、身体には
両性器がある。

父さんも母さんも
好きな方で生きろと言った。

十八になり、
好きになったのは
同じ“男”だった。
水橋豊弘
(みずはしとよひろ)

両性具有

とりあえず、男として育つ

水橋香菜
(みずはしかな)

紘夢の妻・豊弘の母親

口が悪いが優しい

水橋紘夢
(みずはしひろむ)

香菜の旦那・豊弘の父親

敬語口調

久留米廉哉
(くるめれんや)

豊弘の友人兼好きな人母さんと父さんは
十歳になった時に
オレの身体の仕組みを
包み隠さず話してくれた。

それは両性器があるため、
もしかしたら、月経、
つまり、生理が
来るかも知れないという
理由からだった。

そして、母さんたちの
予想通り、その年の
クリスマスに生理になった。

オレの身体は子供も
産めるらしい。

しかし、それは
誰にも知られては
いけない事だった。

なぜなら、オレが
犯されたら大変だからだ。

だから、二人は言った。

もし、この先、
本当に好きになった人にだけ
話すんだぞと……

母さんは口は悪いが
本当に優しい。

父さんの話しだと、
オレが生まれた時に
両性具有だと知っても
笑っていたらしい。

何となく想像ができて
その話しを聞いた時は
思わずオレも笑ったのを
覚えている。

そして現在、
十八になったオレは
好きな人ができた。

友人でクラスメイトの
久留米廉哉だ。

そう、相手は“男”

そして、友人だ。

“普通”の男友達だと
思ってた奴が実は
曖昧な性別だと知ったら
どんな顔をするだろうか?

不安はあるが、
この気持ちを隠し
通せないほどに
廉哉が好きだ。
告白をすると決意した
その日の夜、オレは
自分の気持ちを
父さんたちに伝えた。

*廉哉が好きな事
*告白をすると決めた事
*この身体のことを話す事

二人は黙ったままだ。

多分、最初の二つは
気にしてないと思う。

問題は最後だろうな。

『遥は秘密を明かすほど
廉哉君が好きなんだな?』

確認するってことは
やっぱり、最後のことか。

「ずっと、言えなかったけど
一年の頃から好きだったんだよ」

高校に入ってから三年間
ずっと同じクラスで
一目惚れだった。

『わかってるんですか?
廉哉君に軽蔑されるかも
知れないんですよ?』

父さんは
あくまでも反対らしい。

オレだって、
そのくらいわかってる。

もし、打ち明けて
軽蔑されたら
立ち直れないだろう。

喧嘩になりそうな
雰囲気を壊したのは
母さんだった。

『紘、落ち着いて。
ハルも怒鳴るな』

母さんの言葉で
オレたちはなんとか落ち着いた。

「ごめん、母さん……」

『解ればいいのよ。
さてと、話しを戻すよ』

三人で座り直して
話しの続きを
することになった。

結果、オレの思うように
すればいいと言ってくれた翌週の水曜の放課後、
オレは廉哉を空き教室に呼んだ。

「わざわざ、悪いな」

とりあえず、詫びる。

「別に用事がある
わけじゃないから気にするな」

優しい奴だな。

「それで、話しって?」

まぁ、そう思うよな。

普段から一緒にいるオレから
改まった話しがあるなんて
思いもしないだろうからな。

「オレはずっと
秘密にしてたことが二つある。
一つは廉哉を
恋愛対象で好きってこと。
もう一つは家族以外
知らないことだから、
多分信じられないと思う」

此処までは反応を示さないか?
と思った矢先に意外な
言葉が返ってきた。

「豊弘が俺を好きだとは嬉しいな」

え? 嬉しい?

「それで、
もう一つの秘密って?」

気持ち悪がられないだろうか?

軽蔑されないだろうか?

不安が募る中で
意を決して言う。

「オレの身体は特殊なんだ」

そう言って、廉哉の前で
下を全て脱いだ。

「おい豊弘」

いきなり脱ぎ出したオレに
驚いた廉哉の手を握って
女性器へと導いた。

「え……」

とりあえず、軽蔑は
されなかったみたいだ。

「遥、これは……」

驚くよな。

男友達と思ってた奴が
実は両性具有だったなんて。

廉哉の手を解放し、
下を穿いてからオレは
もう一度、
告白の言葉を口にした。

「廉哉が好きだ」

この身体のことを
知った上で廉哉は
どう返して来るだろうか?

「豊弘」

名を呼ばれ、
返事をする。

「何?」

「変なこと訊くが
子供産めるのか?」

とりあえず、
批難や軽蔑の
言葉じゃなくてよかった。

「まぁな」

苦笑いで答えたら
何故か、抱きしめられた。

「廉哉?」

これは、受け入れて
もらったと思っていいんだよな?

「最初に言っておくが
確認したが
勘違いしないでほしい。

俺もお前が好きだ」

あぁ、成る程。

別にそんなこと
思ってなかったけど……

てかマジ?

「廉哉本当?」

信じられない。

てか、その前に……

「気持ち悪くないのか?」

軽蔑されないのは
嬉しいが不安は拭えない。

男でも女でもない曖昧な身体。

「そんなこと思ってない。

遥がどんなでも
俺はお前が好きだ」

廉哉……

「嬉しい」

廉哉の首に
腕を回して、
自分からキスをした。

「これから、宜しくな」

オレたちは誰もいない
放課後の空き教室で
向かい合って笑った。
「ママ」

あの告白から数年後、
オレたちは結婚して
子供が生まれた。

男の子が二人
女の子が一人。

オレを呼んだのは
今年四歳になる長女だ。

「どうした?」

また廉哉が起きないのか?

社会人になり、
仕事を始めた廉哉は
休日は中々起きてこない。

「パパがお布団から
出て来ないの」

やっぱりか。

「パパは疲れてるから
もう少し寝かせてあげような」

時計はまだ十時だ。

「わかった」

廉哉に似たのか
聞き分けがいい子に育った。

それから三時間後、
午後一時に廉哉は
起きて来た。

「おはよう」

もう午後だけどな。

「もう昼過ぎてるぞ」

聞いてるのか聞いてないのか
曖昧な返事をした後、
いきなりキスをして来た。

「おい、廉哉」

ったく、何時娘が来るか
わからないっていうのに
こいつはしょうがねぇ奴だな。

そんな所も好きなんだから
もう末期だよな……

こうして、オレたちは
家族になり
幸福に暮らしている。
こんにちは&こんばんは。

久々の完結作品です。


松本豊弘ママ5でした

2015/8/13(完)
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop