妄想から始まる恋
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「お疲れ様です〜」
「お先に〜」
同じ職場の人達が次々と帰っていく中、私はパソコンをじっと見つめていた。
「千夏〜、今日も残業?」
同僚のあかねちゃんから、そう声がかかる。
「うん。もう少しやってく。」
「もう、千夏頑張り過ぎないでよ?」
心配そうな顔をしながら帰って行ったあかねちゃん…。
仕事がもう少し残ってるのは本当…。
でも、他に残らなくてはいけない理由があるから、やらなくてもいい仕事までやっている。
その後もカタカタとパソコンに打ち込んでいると、いつの間にか、静まり返っていて誰もいなくなっていた。
「よし!」
キリのいいところで作業を止めて、パソコンを閉じる。
私はデスクの脇にある、自分のバックから分厚い手帳を取り出した。
「ふふふっ…」
開くと、既にびっしりと文字が書かれている。
ページをめくり、まっさらな紙に新たな文字を書き進めた。
「今日は、渡辺さんを書こう。」
私は…このノートに職場の人とデートしている所や付き合ってる所を妄想しては、書いていた。
もちろん、付き合ってなど居ないし、好きな人もいない…
だから、誰かにこのノートを見られたらやばい…
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