天然たらしが本気を出す時。

「おかえり」


教室に戻ると頬杖をつきながらシャーペンをくるくるしていた七瀬くんがふわりと微笑む。



「りんごジュース買ったんだね」

「うん!りんご美味しいからね」




そう言って飲みかけのりんごジュースをゆらゆら揺らし七瀬くんに見せびらかす。

廊下を歩いてる途中に飲んでしまった私はとてもお行儀が悪い。知ってる。

ちなみに麻里ちゃんは飲んでなかった。

さすがだ。




「なんか俺もジュース飲みたくなってきたな」


「なんと。今から買ってきてあげようか?
走れば授業には間に合うし」




授業が始まるまであと5分。
頑張れば間に合う。

私も気の利いた女になりたいと思い買ってくるよと提案した。



でも七瀬くんは首を横にふり

「ううん、それが飲みたい」

と私の持っているりんごジュースを指差した。

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