天然たらしが本気を出す時。
「ありがとう。コウをだしに使ったみたいになっちゃったけど、これで橘さんと会う理由が出来た」
「今度はコウと3人で近くの遊園地とか行く?」
「えっと…それは全然いいけど…」
「じゃあ決定。楽しみだね」
少し照れくさそうに私を見て笑う七瀬くんの顔が、なんていうか本当に喜んでいるような表情をしていて。
なんなの!?え!?
ナチュラルにドキドキさせてくるのやめてくれない!?
ていうか、え!?
七瀬くんと出かける予定できちゃったんだけど。
私凄いドキドキしてるんだけども。
熱いんだけども。
クラクラするんだけども。
私やっぱり
七瀬くんのこと好きだよね?
それも結構。
自分の気持ちがわからないと思っていたけど、好きでもない人に対してきっとこんなにドキドキしない。
息すらし辛いなんて、こんなの経験したことないもん。
うん。
好きだ。
それも確実に。
自覚した途端、いっきに身体中が熱を帯びる。
手で顔を触ってみるけれど、手も熱くなっていて顔の熱さがわからない。
七瀬くんに気づかれる前にこの場を離れなきゃっ
「ごめん、私ちょっとトイレ…!」
七瀬くんの顔も見ずに、そう言い席を立ち廊下は走る。
「え、橘さんっ」
という七瀬くんの声が聞こえたけど、無視して教室を出た。
トイレへ着き深呼吸をする。
今の行動は絶対変だって…。
トイレに行くのにあんなに焦らないって。
相当尿意を我慢してた子みたいじゃん。
トイレの鏡で自分の顔を見てみると、顔はもちろん耳まで真っ赤になっていて、そんな自分に恥ずかしくなり、さらに体温が上がって気がした。
顔を洗って熱を冷ましたかったのだけど、化粧をしているため出来ず、結局自然に熱が冷めるまで待つしかなかった。
そのため、結構な時間が経ってから教室に戻ることになってしまい、七瀬くんに
「俺が話しかけたせいで我慢させちゃってたよね、ごめんね」
と謝られてしまった。
ちがーーーう!!!!
全力で否定したいところだったけど、本当のことを話すわけにもいかず
「あはは…全然大丈夫…だよ…」
と答えるしかなかったのだ。最悪。