天然たらしが本気を出す時。
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「あのさ、私お化け屋敷苦手なんだよね」
お化け屋敷に入るために並んでいる途中、正直に七瀬くんに打ち明けた。
このまま入ったら私どうなるかわかんないし。
もしかしたら意味のわからない奇声あげるかもしれないし、奇妙な行動をとるかもしれないし失神して倒れるかもしれないし。
そしたら七瀬くんに迷惑がかかるし。
そう思い、打ち明けたのに
「うん。
多分そうなんだろうなと思ってわざと誘った」
サラリと。真顔で。とんでもない発言をする彼。
「え、?」
「ん?」
いやいやいや、『ん?なにか問題でも?』みたいな顔してこっち見ないでよ!!
問題だらけだわ!
「わざとって言った?」
「言った」
「それはどういう心境で…?」
「怖がる橘さん見たいなって」
……前から思ってたんだけどさ
七瀬くんってSっ気あるよね!?
とてもとても優しいし、いい人なんだけどね!?
「全力で拒否したいんですけど」
「まあ、橘さんがどうしても嫌っていうなら無理強いはしないよ。嫌な気持ちにさせたくないし。
ただ、お化け屋敷頑張ってくれたら、あとで美味しいクレープご馳走するよ?」
「……クレープ?」
「そ。フルーツいっぱいの美味しいクレープ」
「……」
「入ってくれるよね?」
自身げに口角をあげる七瀬くんに
この誘惑に負けてたまるか。絶対に負けない。
と心の中では思っていたのに、口から出た言葉は
「頑張ります」
…そうですよ馬鹿ですよ!ごめんなさいね!!