天然たらしが本気を出す時。







「あのさ、私お化け屋敷苦手なんだよね」



お化け屋敷に入るために並んでいる途中、正直に七瀬くんに打ち明けた。


このまま入ったら私どうなるかわかんないし。


もしかしたら意味のわからない奇声あげるかもしれないし、奇妙な行動をとるかもしれないし失神して倒れるかもしれないし。




そしたら七瀬くんに迷惑がかかるし。





そう思い、打ち明けたのに




「うん。
多分そうなんだろうなと思ってわざと誘った」


サラリと。真顔で。とんでもない発言をする彼。


「え、?」

「ん?」



いやいやいや、『ん?なにか問題でも?』みたいな顔してこっち見ないでよ!!

問題だらけだわ!




「わざとって言った?」

「言った」

「それはどういう心境で…?」

「怖がる橘さん見たいなって」




……前から思ってたんだけどさ
七瀬くんってSっ気あるよね!?

とてもとても優しいし、いい人なんだけどね!?





「全力で拒否したいんですけど」


「まあ、橘さんがどうしても嫌っていうなら無理強いはしないよ。嫌な気持ちにさせたくないし。

ただ、お化け屋敷頑張ってくれたら、あとで美味しいクレープご馳走するよ?」





「……クレープ?」

「そ。フルーツいっぱいの美味しいクレープ」




「……」




「入ってくれるよね?」




自身げに口角をあげる七瀬くんに
この誘惑に負けてたまるか。絶対に負けない。






と心の中では思っていたのに、口から出た言葉は




「頑張ります」



…そうですよ馬鹿ですよ!ごめんなさいね!!
< 165 / 189 >

この作品をシェア

pagetop