天然たらしが本気を出す時。

ところで一説によると、恋をするドキドキ、いわゆる胸キュンと、こういったお化け屋敷で感じるドキドキは一緒らしい。




だからピンチを乗り越えた二人は結ばれる可能性が高いと言われている。


そう、つまりは今の状況とてもチャンスなわけだ。

さっきまで怖すぎてそんなことを考える余裕もなかったけど、この状況は使えるのでは?



暗闇に紛れて七瀬くんに抱きついちゃったりしちゃえばいいのでは?

そしたら告白の成功率も上がるのでは?





え?考えることが汚いって?

女の子がみんな純粋無垢だと思うなよ。



恋には計算も必要なんだからね。

みんな何かしら考えて行動してるんだからね。






よし、可愛い声で悲鳴をあげてナチュラルに七瀬くんの腕を掴む。


これでいくよ!!!



さあこい!!おばけ!!



怖いのは変わりないけれど、目的が決まった今、さっきよりは全然怖くなくなった。



恋のパワー恐るべし。

そして後ろでガサッと音がして俊敏に振り向く。


きた!!!


七瀬くんの腕の位置把握!

喉の調子バッチリ!



「ウォォォォォォォォォ」

そして変な呻き声を出しながら出てきたお化けと同時に、

「きゃっ」


と可愛いかどうかはわからないけど、私なりの精一杯の可愛い悲鳴をあげ、七瀬くんの腕に捕まりにいく。





ここで、七瀬くん〜怖いよ〜助けて〜って言えば完璧!!










「七瀬く「橘さん」



しかし、七瀬くんと言うよりも先に、私が腕を掴むよりも先に






ーーーー七瀬くんに腕を引っ張られ








「こういうシチュエーション期待してたんだよね」




彼の胸の中にインしてしまった。





< 167 / 189 >

この作品をシェア

pagetop