天然たらしが本気を出す時。



お化け屋敷から出てコウくんを迎えに行く。



ちなみに私の心臓はお化け屋敷を出るまでずっとドキドキしっぱなしだった。



「コウくん!ごめんね、おまたせ」



楽しそうに遊具で遊んでいたコウくんに声をかけると




「かな兄!こなお姉ちゃん!」



と向日葵のような笑顔でパタパタとこちらへ走ってくる。

コウくんにはこのまま真っ白い純粋なままで育ってほしいなあ。なんて親にでもなったような気持ちでいると






ピロリンピロリンッ






電話が鳴った。




鞄に入っていた携帯を取り出すと私の携帯は鳴っていなくて、隣にいる七瀬くんを見る。




「あ、俺だ」


そう呟き、彼は携帯の画面を見た後、電話には出ずポケットに携帯をしまった。


「え、出ないの?」

「うん」



え、全然出てくれていいのに。


「あとでかけ直すから心配しないで」



まあ七瀬くんがそう言うならいいけど…。



しかし、一度途切れた着信が再び鳴り出した。



二度目の着信だし、出た方がいいんじゃないかと思い





「私あっち行ってるし
電話出てくれて大丈夫だよ」




と言えば


「んー、大丈夫。ここにいて」




そう言い、ポケットから取り出し七瀬くんが電話に出た。



人の電話を聞くのはあまり良くないと思い、コウくんと話をしていると






不意に耳に入ってきた













「……中野さん……」












中野さん、と言う言葉だった。








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