天然たらしが本気を出す時。


前後の言葉は聞き取れなかったけど、はっきりとその二文字だけは聞こえた。


中野。…それは麻里ちゃんの名字。

ーーー電話の相手は麻里ちゃん?


どうして麻里ちゃんが七瀬くんに電話を?

こんな休日になんの用が…?

というか、なんで麻里ちゃん七瀬くんの電話番号知ってるの?




私、七瀬くんの電話番号、知らないんだけど。



メールはするけど、電話なんて一度もしたことないんだけど。





「…こなお姉ちゃん…?」

「あ、ごめんねコウくん」




つんつんと袖を引っ張られ、ハッと我にかえる。

そして、電話が終わったようで





「ごめんね」


と携帯をしまいながら謝る七瀬くん。


「ううん、大丈夫だよ」


…聞いてもいい、のかな?

今の電話の内容。

ものすごくきになるんだけど。




聞こうか聞かないか悩んでいると



それが表情に出たのか


「さっきの電話中野さんからだった」


七瀬くんから話を振ってくれた。




「そう、なんだ」




「うん。
なんか色々あったらしくて来て欲しいって言われた」









……え?

来て欲しいって。

七瀬くんが麻里ちゃんのところに?



今から?

なんで?




思わず

「行くの、?」




と口からポロリと出た言葉に後悔の念が押し寄せる。




行くのって、その言い方はダメでしょ私。



まるで行って欲しくないって言ってるみたいじゃん。
< 170 / 189 >

この作品をシェア

pagetop