天然たらしが本気を出す時。
「答え方がわかりません」
「じゃあ俺が勝手に判断する」
得意げに口角をあげた七瀬くんは
私の頭をふわりふわりと撫でて
そして私をぎゅっと抱き寄せた。
「橘さんはちゃんと頑張ったよ」
彼がゆっくり、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「我慢もしたし辛いことも耐えた、そうでしょ?」
まるで子供に話しかけるように落ち着いた声に、一気に肩の力が抜けた。
「….うん」
頑張ってなかった、なんて。
そんなの真っ赤な嘘だ。
どうにかして堀北と話したくて
家で何時間もかけて話題を考えて
恐る恐る話しかけに行った。
堀北が笑顔で話してくれるのが嬉しかったんだ。
本当に。
すごく、すごく。
このクッキーだって
何度も何度も焼き直しをして
私らしくないと思いつつも
可愛いラッピングをしてみちゃったりしてさ
……こんな私でも、一応、、
ううん。
ちゃんと。恋、してたんだよ。