天然たらしが本気を出す時。
「ねえ橘さん」
「?」
「もうすぐ夏休みだね」
「そうだね…?」
「夏といえば祭りだよね」
「そうだね…?」
「一緒に行こうよ」
「そうだね…、、え?」
「あ、行ってくれるんだ?」
生暖かい風が私達の間を通り抜け、ハッと我に返った。
「え、いや、今のは違っ!」
「あ、駅ついたね。家まで送りたいんだけどコウが一人だから今日はごめんね」
「そ、れはいいんだけど…!」
「じゃあね、気をつけて。
祭り楽しみにしてる」
「ちょ、!」
爽やかに手を振ってUターンして行く七瀬くん。
………帰っちゃったよ!!
帰っちゃったよ七瀬くん!!
強引だな!?と思っていたけれど、帰ってからメールが来ていてやはり七瀬くんは七瀬くんだと思った。
『さっきは無理やりな感じになっちゃってごめん。
嫌だったら無理しなくていいからね(・ω・`)』
……なにこれずるい!!!
いつも(・ω・`)こんな顔文字使わないじゃん!
むしろビックリマークすら使わないじゃん!
短文じゃん!
なのにこれはずるい…!
絶対図ってる!狙ってる!わざとだ!
『その顔文字はずるい。狙ってるでしょ』
『ばれた?』
こんの!ばれた?ってなんだ!やっぱりか!
もういい!顔文字可愛かったからもういい!
そもそもお祭り行くの嫌じゃないし!
誘ってもらえて少し嬉しかったし…!
行くよ!行きますとも…!
『花火は必須だよ』
『了解』