天然たらしが本気を出す時。
「こな~友達来てるぞ~」
扉越しにお兄ちゃんに
「部屋まで通してー!」
そう叫ぶ。
ついに夏祭り当日。
久しぶりのお祭りにわりとワクワクしている自分がいる。
お母さんに出してもらった水色の浴衣を眺めていると、ドタバタと部屋に入ってきた
「やっほ~!来たよ!見て、持ってる化粧品ありったけ詰めてきた」
大きいポーチを持ってニコニコするミユと
「私は髪の毛担当」
コテをパカパカさせて自信ありげに口角を上げるマイ。
「今日はどうぞよろしくお願いします」
「「まかせなさい」」
そしてさくさくと器用な手つきで私を綺麗にしていってくれる2人。
髪の毛を触られ、その手つきに眠くなりうとうとしているうちに
「「はい、出来た」」
あっという間にメイクと髪のアレンジが終わった。
「おお!ありがとう!!綺麗!」
メイクも髪の毛もすごく丁寧にやってくれてあり、嬉しくなる。
「髪の毛これどうなってるの!?すごい!
このチークの色味可愛い!!」
感動しながら鏡を手に取りあちらこちら自分を見る。
「そんなに喜んでもらえたならやった甲斐があったってもんよ」
「うんうん、頑張ってきなよ~!」
頑張るとかの問題じゃないんですけどね…!とは言えないから
「ありがとう!」
と言ってマイとミユを見送った。
…さて、私も行きますか。
歩きにくいし早めに出ないとね。
それにしても私は七瀬くんの浴衣姿がとても気になる。…どんな感じなんだろう。
イケメンに浴衣だ。最強だろうよ。
・
・
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あ、ダメだこれ。
そう思えざるおえなくなったのは、待ち合わせ場所の駅前に着いた時だった。
あちらはまだ私に気づいていないけれど、私はもう気づいてしまった。
改札付近で輝いている浴衣姿の美少年に。
紺色の浴衣を綺麗に着こなす七瀬くんの姿は、後ろに薔薇を添えたくなるくらい絵になっている。なんなら『パァ…』っていう効果音も付けたいくらい。
そして私は『あ、ダメだこれ。私七瀬くんの隣歩けねえ』と思わざるおえなかったのである。
ミユとマイに綺麗にしてもらって、ここに着くまでは、あれ?なんかみんな私を見てる?るんるんっ
な気持ちでいたわけだけど、それは見事なまでの自意識過剰だったことに今気づく。
知ってるよ!!!どうせ私は平々凡々な顔立ちですよ!!!あ、よく見ると可愛くなかった。って言われる顔立ちですよ!!