天然たらしが本気を出す時。
だめだ、このままいけば完全に七瀬くんのペースに持っていかれる。
しかも私だけ楽しんでるし得してるしいい思いしてるじゃん。
私だって七瀬くんに楽しんでもらいたいと思ってるんだから。
よし、今からは私が七瀬くんの手となり足となろうじゃないか。
「七瀬くん!これとこれ美味しいから食べて!」
「ありがと。橘さんも半分食べなよ」
「やった!」
「七瀬くん!人多いしはぐれたら困るから私の後ろ歩いてね」
「手繋いでくれた方がはぐれなくて済むから、やっぱり手繋ごうか」
「さらっと握ってくるね!?」
ダメだ。何をしても結局七瀬くんのペースになってしまう。
…もう諦めよう。そうしよう。
そのあと七瀬くんと花火を見た。
私よりも真剣に花火を見て「おおー」「あ、次青だよ」「ほらきた!」なんて楽しんでる七瀬くんを見て、なんだか楽しくなった。
普段落ち着いてる彼も、まだ17歳なのだ。
かわゆい。
花火を見るまでは順調だったのだけれど
問題はそのあとだった。
七瀬くんからゴミを預かり捨てにきた私は
屋台の裏で
「どうしたの?迷子?」
なぜか迷子と間違えられていた。
いやいやいやいや。
この歳で迷子はきついわ!
なに、このお兄さん方私のこと何歳だと思ってるの!?
チャラチャラとした格好の大学生?かな?お兄さん集団は私を取り囲み質問攻め。
「親は?いないの?」
「一緒に本部まで行こうか?」
……超優しいね!?