天然たらしが本気を出す時。
その見た目で優しいとかなによ。ずるい。
なんて思いつつ、私は子供じゃねえ!と少しの怒りがあり、若干不貞腐れながら
「…迷子じゃないです」
といえば
「……あれ、あ、子供じゃない?」
とまじまじと私の顔を見だした彼ら。
そうだぞ!よく見ろ!お化粧しとるがな!
暗くて顔よく見えなかったんだろ!
そうだろ!?
「あれ~本当だ。しかも可愛いじゃん」
「うんうん、浴衣似合ってるよ!」
そして急に私を褒め出す彼ら。
そうなのだ。
ミユとマイのおかげあって
私は今日は可愛いのだ。
普段なかなか可愛いと褒めてもらえない私は、お兄さん方の言葉が嬉しくて
「そ、そうですか?えへへ」
まじ照れした。
そのあともお兄さん方に
「迷子と間違えちゃってごめんね?でも1人だよね?」
「あ、1人ではな…「じゃあなんか買ってあげるから一緒にあっち行こうよ」
「うんうん、なに食べたい?好きなの言ってみな?」
「い、嫌だから私1人では…「かき氷はもう食べた?りんご飴は?」
……ぜんっぜん話聞かねえな!!
だけどとてつもなくバカな私は、お兄さん方があまりに優しく、そしてたくさん私を褒めてくれるので調子に乗ったのである。
普段褒められないブスはこういう状況に慣れていないので、素直に嬉しかったのである。バカだ。
単純かつちょろいと呼ばれても致し方ない。
「ほら、りんご飴買ってきたから食べなよ!」
流されるままりんご飴の屋台まで来てしまい
渡されたそれをデレデレしながら受け取ろうとした時
「橘さんここに居たの」
そう声がして振り向けば
「あ、七瀬くん…」
少し怪訝そうな顔をした七瀬くんが立っていた。