天然たらしが本気を出す時。
「小菜お姉ちゃん…」
私の膝に登ってくるコウくんを抱きかかえると、さっきまでの不安げな表情はなくなり安心したように笑っていた。
コウくんは頭を撫でられるのが好きなようで、ふわふわの髪の毛をそっと撫でてあげるといつも嬉しそうに笑ってくれる。
かわいい。かわいいよ。
「小菜お姉ちゃんって呼ばれてるんだねっ」
「うん!私が呼んでって言っただけなんだけどね」
と笑う。
コウくんに初めてそう呼ばれた時の感動は今でも忘れられない。
「私も呼ばれてみたいな。
兄弟いないから憧れちゃうっ」
キラキラとした瞳でコウくんを見つめる彼女。
けれどコウくんはひたすら私のほうを向いたままで麻里ちゃんの方を見ようとはしなかった。
本当どうしたんだろう?
疲れちゃったのかな。
「お、大人しいねっ」
少し動揺している様子の彼女。
こんな美少女を無視するのはコウくんだけだよ…!と内心焦る。
むしろ私が麻里お姉ちゃんと呼びたいよ!!
…でもコウくん人見知りなのは確かだけど、そこまで大人しいっていうわけじゃないと思うんだけど。
その後麻里ちゃんの迎えが来て彼女は帰って行った。