あなたとの距離
第12章 なんで?
「立花さん!」
引き止めようとしたけど、教室から出て行ってしまう。
せっかく声をかけてくれたのに。
悪気はないって分かってるけど、理沙の事を少し恨めしく思ってしまう。
この1ヶ月、席が前後になったのに、全く会話が出来なかった。
立花さんに話しかけようとすると、長谷川さんがすぐに割り込んで、自分の話に持って行ってしまう。
私の気持ちを知ってか知らずか、その度に面白そうに私の事を見てくるから、嫉妬が顔に出る前に、2人から目を背けて立花さんとは会話出来なくなるんだ。
立花さんも私も部活が忙しいから、今日みたいな日じゃないとチャンスないのに。
はあ、理沙は親友だしね。
仕方ないか。
帰り支度をして、理沙の席に向かう。
理沙は、珍しい事に長谷川さんと言葉を交わしてて、私の姿を見ると話を打ち切るように私の方に歩いてきた。
長谷川さんとの話は良かったのかな?
なんか難しい顔してこっち見てるけど。
しかも、いつもいるはずの明日香がいない。
「あれ、明日香は?」
「なんか用事あるって先帰ったよ」
「そっか」
2人で連れ立って玄関に向かう。
校門を出た所で、理沙が寄り道の提案をしてきた。
「時間早いから、土手の方に行かない?」
「いいよ」
普段の通学路とは遠回りになるけど、川沿いの道は気持ちいい。
土手が広いから2、3人でも横に並んで歩けるし、思いっ切り音出しをしたい時に楽器を持って練習することもある。
途中でコンビニに寄って飲み物を買ってから、土手まで出てベンチに腰を下ろす。
何とはなしに川をボーっと眺めてると、横から理沙が話始める。
「懐かしいね。もうあれから1年経つんだ」
そう言えば、理沙と出会ったのは、この土手だった。
同じクラスだから「出会った」っておかしな話なんだけど、それまで顔と名前ぐらいしか知らなくて、まともに言葉を交わしたのは初めてだったから。
「私が泣いてた時、何も聞かずにハンカチ差し出してくれてさ。大人対応でビックリしたな」
「なんて声かけていいか分からなかっただけだよ」
理沙がそんな風に思ってくれてたなんて意外だった。
理沙はいつだって自信ありげで、ハキハキしてて、背筋がピンと伸びて、誰もが振り向くような美人で大人っぽいから。
あの頃、理沙がモデルにスカウトされてる所を見たクラスメートが、「他人を見下してる」だの「自慢されてウザい」だの吹聴して、総スカンを受けていた。
と言っても、私は全然気付いてなくて、ここの土手で理沙に言われて初めて知ったんだけど。
「あの時さ、恵那に『私と一緒の所見られたらヤバくない?』って聞いて、恵那があまりにも素っ頓狂な声で『なんで?』って聞き返してきたでしょ。
まさか、私が皆に無視されてる状態を知らないクラスメートがいるなんて、思いもしなくてさ。
おちょくられてるのかと思った」
「そうだったの?」
「今思うと恵那らしいって納得だけどね」
「え、それってなんか、私が周り見えてない子みたいじゃない?」
「その通りでしょ」
「そんなあ」
やっぱり私ってそうなのかなあ。
明日香とかにも良く「恵那って天然!」って言われる事あるけど、理沙もそう思ってたんだ、、、。
「でも、嬉しかった。次の日から、恵那は明日香と一緒に休み時間のたびに声かけてくれてさ。
グループ分けとか誘ってくれて。
学校に来るの、どんどん楽しくなったんだよ」
「そっか。良かった」
こんな私でも人の役に立てたのなら嬉しい
。
理沙って口調がキツイから誤解されがちだけど、優しいんだよね。
なんだか心がほんわかしてしまう。
「恵那」
理沙の思わぬ真剣な声に驚いて彼女の顔を見つめる。
「好きなんだ」
えっ?
「あの日からずっと。恵那の事好きなの」
えっ?
えーーーー?
頭も身体も完全にフリーズしてしまった。
「立花さん!」
引き止めようとしたけど、教室から出て行ってしまう。
せっかく声をかけてくれたのに。
悪気はないって分かってるけど、理沙の事を少し恨めしく思ってしまう。
この1ヶ月、席が前後になったのに、全く会話が出来なかった。
立花さんに話しかけようとすると、長谷川さんがすぐに割り込んで、自分の話に持って行ってしまう。
私の気持ちを知ってか知らずか、その度に面白そうに私の事を見てくるから、嫉妬が顔に出る前に、2人から目を背けて立花さんとは会話出来なくなるんだ。
立花さんも私も部活が忙しいから、今日みたいな日じゃないとチャンスないのに。
はあ、理沙は親友だしね。
仕方ないか。
帰り支度をして、理沙の席に向かう。
理沙は、珍しい事に長谷川さんと言葉を交わしてて、私の姿を見ると話を打ち切るように私の方に歩いてきた。
長谷川さんとの話は良かったのかな?
なんか難しい顔してこっち見てるけど。
しかも、いつもいるはずの明日香がいない。
「あれ、明日香は?」
「なんか用事あるって先帰ったよ」
「そっか」
2人で連れ立って玄関に向かう。
校門を出た所で、理沙が寄り道の提案をしてきた。
「時間早いから、土手の方に行かない?」
「いいよ」
普段の通学路とは遠回りになるけど、川沿いの道は気持ちいい。
土手が広いから2、3人でも横に並んで歩けるし、思いっ切り音出しをしたい時に楽器を持って練習することもある。
途中でコンビニに寄って飲み物を買ってから、土手まで出てベンチに腰を下ろす。
何とはなしに川をボーっと眺めてると、横から理沙が話始める。
「懐かしいね。もうあれから1年経つんだ」
そう言えば、理沙と出会ったのは、この土手だった。
同じクラスだから「出会った」っておかしな話なんだけど、それまで顔と名前ぐらいしか知らなくて、まともに言葉を交わしたのは初めてだったから。
「私が泣いてた時、何も聞かずにハンカチ差し出してくれてさ。大人対応でビックリしたな」
「なんて声かけていいか分からなかっただけだよ」
理沙がそんな風に思ってくれてたなんて意外だった。
理沙はいつだって自信ありげで、ハキハキしてて、背筋がピンと伸びて、誰もが振り向くような美人で大人っぽいから。
あの頃、理沙がモデルにスカウトされてる所を見たクラスメートが、「他人を見下してる」だの「自慢されてウザい」だの吹聴して、総スカンを受けていた。
と言っても、私は全然気付いてなくて、ここの土手で理沙に言われて初めて知ったんだけど。
「あの時さ、恵那に『私と一緒の所見られたらヤバくない?』って聞いて、恵那があまりにも素っ頓狂な声で『なんで?』って聞き返してきたでしょ。
まさか、私が皆に無視されてる状態を知らないクラスメートがいるなんて、思いもしなくてさ。
おちょくられてるのかと思った」
「そうだったの?」
「今思うと恵那らしいって納得だけどね」
「え、それってなんか、私が周り見えてない子みたいじゃない?」
「その通りでしょ」
「そんなあ」
やっぱり私ってそうなのかなあ。
明日香とかにも良く「恵那って天然!」って言われる事あるけど、理沙もそう思ってたんだ、、、。
「でも、嬉しかった。次の日から、恵那は明日香と一緒に休み時間のたびに声かけてくれてさ。
グループ分けとか誘ってくれて。
学校に来るの、どんどん楽しくなったんだよ」
「そっか。良かった」
こんな私でも人の役に立てたのなら嬉しい
。
理沙って口調がキツイから誤解されがちだけど、優しいんだよね。
なんだか心がほんわかしてしまう。
「恵那」
理沙の思わぬ真剣な声に驚いて彼女の顔を見つめる。
「好きなんだ」
えっ?
「あの日からずっと。恵那の事好きなの」
えっ?
えーーーー?
頭も身体も完全にフリーズしてしまった。