インスタント マリッジ～取り急ぎ結婚ということで～

冒険の心得《装備は万全に 休息大事 油断大敵 無理厳禁 ※突如現れる無自覚イケメンに注意》

土曜日の朝９時50分、私は今、駅前のショッピングモールが開店するのをシャッターの前で待っている。

ゆうべベッドに入る前にクローゼットやタンスの中を漁ってみたけれど、通勤用のスーツと礼服以外はどれも年季の入った普段着ばかりで、ろくな服が入っていなかったからだ。

疑似とは言え一応デートだし、電車に乗って人がたくさん集まる場所へ行くのだから、近所のコンビニや古本に行くのとはわけが違う。

おしゃれな若者が集う場所を色褪せたパーカーとかヨレヨレのシャツなんかを着て歩くのは、いくら尚史が気にしなくても私自身が恥ずかしい。

おしゃれでかわいいデート服とまではいかなくても、尚史にも恥をかかせないように、せめて少しくらいはまともな格好をして今日の尚史とのデートに臨みたい。

いつもならどちらかが相手の家まで迎えに行くけれど、今日はデートっぽさを出すために駅で待ち合わせたので、待ち合わせの時間までに今日着ていく服を買うことにした。

開店するのを待ちながら腕時計を見ると、時計の針は9時55分を指そうとしていた。

約束の10時より５分ほど早いけど、今のうちに尚史を起こしておこう。